新年の始まりと同時にフィットネス業界では2つのことが起こります。
「やめる人」と「社員を目指す人」がSNS上で自らの出処進退について所信表明をしたり、実際にそれに向けた行動を起こすのです。
(フィットネス業界だけではないでしょうけれど)
「やめる人」というのはフィットネス業界の正社員スタッフが正社員をやめるということを意味しています。
どの業界でも「新卒採用の社員の3割が入社3年以内に退職する」という統計データがあるようですが、フィットネス業界は特にこの傾向が顕著な業界だと感じます。
運動することが好き、または
身体を動かすことの楽しさを多くの人に伝えたいと思って入社したものの、職場のフィットネスクラブで求められることは、
より多くの入会者を獲得することや会員としての在籍者の数を増やすといったような「数字を増やすこと」と、
今いる会員さんたちが退会しないように、ずっと会員で居続けてもらうための
「おべっかと媚売り」ですから、3年もそれを続けていれば、
「私がやっていることは”入会して”&”辞めないで”のお願いばかりじゃないか?」
「その”お願い”をこれからもずっとやり続けていく人生なのか?」
という気持ちになるのは自然と言えば自然でしょう。
そして他にももらえる給料の額や職場の人間関係など、様々な要因が積もっていき、「よし!やっぱり自分がやりたいことをやろう!」となって退職、という流れです。
反対に「社員を目指す」というのはアルバイトスタッフに見られる傾向です。
社員スタッフとは異なり、アルバイトスタッフの場合は「入会者増やせ!」「会員数を増やせ!」「物販の売り上げを上げろ!」といった「数字を増やさなくてはいけないプレッシャー」はなく、現場でお客様に直接運動指導をしますから、「運動の楽しさを伝える」というやりがいは十分に感じています。
ですが、そういった充実した日々を送っていても、今度は「お金に関する不安」というものが沸いてきます。
この正月に一挙に再放送された「下町ロケット」というドラマでも間接的に描かれていましたが、日本という社会は「能力」よりも「役職」に対して賃金が払われます。どれだけ高い技術(フィットネスクラブで言えば中身のある運動指導ができること)があってもそれに見合った対価は支払われません。
「無能な上司の方がもらってる給料の額が多い」という矛盾がこれによって生じます。
ですから「大手企業への引き抜き」、「今より高いポストにキミを推薦するよ」といったドロドロの構図や、それに対する「自分の技術で世間を脅かせるんだ!」という願望がドラマになるわけです。
フィットネスクラブのアルバイトというのは決して高い時給ではありません。居酒屋やパチンコ屋の方が断然高給です。それだけフィットネス業界というところには多くのお金が流れていないということでもあります。
「やってる仕事はすごくやりがい溢れるものだけど、このままだとずっとアルバイトか・・・・」と、ある時ふと考えます。
自分の今後、結婚や世間体といったものが頭をよぎっていき、それでも当面は困らないのでアルバイトスタッフを続けますが、それでもだんだんと不安は膨らんできます。
そして生活の安定、もらえる金額のアップを目的として「正社員」を目指すということになります。
大卒で「こいつは将来有望だろう」と思って人事が採用をした人材がすぐに辞めていき、現場で必要な「労働力としてのバイトスタッフ」が社員を目指すというのは面白い構図です。